トランスフェクション

トランスフェクションのヒントとコツ:               

  1. 健全な細胞を用いて始めます
  2. 実験を計画します
  3. 高品質 DNA を使用します
  4. 細胞を播種します
  5. 脂質 DNA 複合体を調製します
  6. ポジティブコントロールを使用します

                  

 

 

                                                                     

1)健全な細胞を用いて始めます

a. トランスフェクション実験に使用する前に、細胞を解凍して 3 ~ 4 回継代培養します。これにより、細胞が凍結状態から回復し、正常な増殖速度に戻ります。

b. 生存率 90%超の細胞のみを使用します―トリパンブルー染色によって簡単に細胞生存率を測定できます。

c. 定期的に細胞を継代培養し、細胞がコンフルエント状態または成長しすぎたりしないようにします。細胞がコンフルエント状態になると、細胞形態だけでなく増殖速度も変わる場合があります。

i. 90%コンフルエンスの時点か、その前に細胞を継代します。細胞の剥離には TrypLE™ 試薬の使用をお勧めします。TrypLE™ 試薬は安全キャビネット内に室温で保管できるため、TrypLE™ 試薬を追加で加え、フラスコ表面を覆うのに十分な溶液以外を吸引することで PBS 洗浄を省略できます。

ii. 継代条件は、個々の細胞株によって変わります。おおよその目安:

  • 倍加時間が 16 時間ごとの増殖の速い細胞(HEK-293 細胞など)の場合、細胞を 1:10 に分割します
  • 倍加時間が 36 時間ごとの増殖の遅い細胞(初代細胞など)の場合、細胞を 1:5 に分割します

d. 細胞株の凍結ストックを維持して、定期的に新しい細胞を解凍します。継代数が多くなると(30 ~ 40 回超)細胞の増殖速度や形態が変わる場合があります。

2)ラボに入る前に実験を計画します。

重要な点は、開始前にプロトコールをよく理解する、どのくらいの材料が必要か決定する、必要なものがすべて揃っていることを確認することです。

a. 各操作または実験条件の概要を示すプレートマップの作成から始めます。

b. 必要になる脂質および DNA ストック量を算出し、次の材料が十分にあることを確認します。Opti-MEM 培地、Lipofectamine 2000 または Lipofectamine LTX 試薬、および DNA(0.5 ~ 1 µg/µL)。

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3)トランスフェクションには高品質な DNA を使用します。

a. エンドトキシンフリーキットまたはプロトコルを使用して DNA を調製します。

b. OD 260/280 比を測定して DNA の純度を求めます。1.7 ~ 1.9 内である必要があります。この比が高すぎる、または低すぎる場合は不純物があるため、トランスフェクション実験に使用しないでください。

c. DNase/RNase フリーの水または TE で DNA を希釈します。

d. 0.5 ~ 1 µg/µL の使用濃度に調製します。DNA を SpeedVac 遠心濃縮装置または透析ろ過(Amicon 限外ろ過など)により濃縮します。

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4)トランスフェクション予定日の前日に細胞を播種します。

a. トランスフェクションの 1 日以上前に播種すると、トランスフェクション効率が低下することがあります。

b. トランスフェクション時に細胞が 70 ~ 90%コンフルエンスになるような密度で細胞を播種します。

c. トランスフェクション時の細胞密度はトランスフェクション効率に影響します。トランスフェクションの最適化を簡略化するため、または時間を節約するために、確実に高いトランスフェクション効率が得られるよう 2 種類の密度で播種することをお勧めします。

d. 細胞の播種とトランスフェクションを同時に実施、またはリバーストランスフェクションプロトコールを使用して行います。リバーストランスフェクションでは、標準のトランスフェクションまたはフォワードトランスフェクションに用いるよりも 2.5 倍細胞を多く使用する必要があります。

e. トランスフェクション効率に影響しない抗生物質と血清を含む培地の細胞にトランスフェクション複合体を添加しても構いません。

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5)脂質 DNA 複合体を調製します。

a. 効率を最大にするため、Opti-MEM 培地中で脂質と DNA の複合体を形成させることをお勧めします。代わりに、無血清培地を用いても構いません。

b. Opti-MEM 培地で脂質を希釈します。Opti-MEM 培地の 2 本目のチューブで DNA を希釈し、等量ずつ混合して脂質と DNA の複合体を形成させます。この 2段階希釈法によって、希釈した DNA に脂質を直接添加するよりも、高品質のデータと再現性の高い結果が得られます。

c. 脂質を Opti-MEM 培地で希釈したら、希釈した DNA を添加する前に 2 ~ 5 分間のインキュベーション時間をとると最適です。希釈した脂質を 20 分以上インキュベートしないでください。

d. DNA Opti-MEM 溶液は安定性が高いため、使用の最大4時間前に調製できますが、4時間を超えないようにしてください。

e. 希釈脂質と希釈 DNA を等量ずつ混ぜ合わせたら、ピペットでゆっくりとピペッティングするか、チューブの底を軽くはじくか、または素早くボルテックスにかけて溶液を混合します。

f. 脂質 DNA 複合体を 5 ~ 10 分間インキュベートした後、細胞と増殖培地が入ったウェルにこの複合体を移します。複合体を培地の上に滴下して加え、混合液に添加した後プレートを優しく揺らします。細胞が移動する可能性があるため、ウェル内の脂質 DNA 複合体を強く混ぜないようにします。

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6) GFP または LacZ レポータープラスミドなどのポジティブコントロールを使用してトランスフェクション効率を評価します。

トランスフェクトした細胞数または細胞の割合と GFP 発現強度は、顕微鏡(EVOS FLoid™ 細胞イメージングなど)やフローサイトメトリー(Attune サイトメーターなど)を用いて簡単に測定できます。LacZ 発現は ToxBLAzer™ キットを使用して測定できます。

a. トランスフェクション後 24 ~ 48 時間で、プラスミド発現は可視化または検出可能である必要があります。

b. ポジティブコントロールは別のウェルに入れても、目的とするプラスミドと共にコトランスフェクトしても構いません。コトランスフェクションの場合、希釈した脂質を加える前に GFP プラスミド 50 ~ 100 ng と目的とするプラスミド 100 ng を Opti-MEM 培地に入れて混合します。

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